ラム酒の分類による違い
1.原材料の違いによる分類
トラディショナルラム
砂糖を作る時に出る糖蜜を原料とする。糖蜜は冷蔵保存が可能で、1年は風味が保てるため、年間を通じてラムの製造が可能となる
※糖蜜とは=砂糖を精製する過程で生じる副産物的な存在、サトウキビの砂糖を搾った残留物。別名「廃糖蜜」「モラセス」とも呼ばれている。黒砂糖を煮詰めてできる「黒蜜」とは別物。糖蜜には糖分やミネラル分などの成分が残っている。サトウキビ由来の糖蜜には、糖分が40~60%前後も残っている。糖蜜は、甲類焼酎の原料や日本酒に入れる醸造アルコールの原料となります。ジンやリキュールのベースとなるニュートラルスピリッツも糖蜜由来の原料を使用していることがほとんどです。梅酒の原料となるホワイトリーカーもニュートラルスピリッツです。アルコールの作り方はラムと同じですので、皆さん知らない間にラムを飲んでいることになりますね
全世界のラムの9割はこのタイプ
クセが比較的少ない
アグリコールラム
砂糖を作らず、サトウキビジュース100%をそのまますべて発酵して、蒸留することで作られる。サトウキビの収穫期となる乾季しか製造ができない
フランス植民地で確立した製法。全生産量の1割程度しかない
コクのある味
ハイテストモラセスラム
サトウキビジュース100%を加熱し、砂糖を作らずシロップ化した「ハイテストモラセス」を原料とする。糖蜜は糖度40~50%であるが、ハイテストモラセスは糖度70~80%もある。
糖蜜と同様に風味を損なうことなく冷蔵保存が可能であるため、年間を通じてラムの製造が可能である。水分をさらに飛ばすと黒糖になる。
アグリコールほどはクセがない
2.熟成期間・熟成方法の違いによる分類
ホワイトラム
基本的に熟成させていない無色透明のラムで、すべてのタイプのラムの中で最も生産量が多い
トラディショナル製法で作られたものは、クリアで軽い味わいとなる。ストレートで飲むより、カクテルのベース向き
アグリコール製法で作られたものは、サトウキビ本来の甘みや旨み、香りがのこり、ストレートやロックがお勧め
ハイテストモラセス製法で作られたものは、アグリコール程ではないが、素材の風味が残るためストレートやロックがお勧め
ゴールドラム
基本的に内側を焦がしていない大樽またはバーボン樽等で2ヶ月~3年未満の熟成したラム
ゴールドラムのポイントは熟成年数ではなく、ラムの色づき度合いで商品化のタイミングを図るため、樽の横にガラスの小さな容器がついておりそこで色を見ている
ホワイトラムの持つ荒々しさ、フレッシュ感は残しつつ、まろやかな味わい
ダークラム
基本的に、バーボン樽等で3年以上の熟成をしたラム
過去にはウイスキーやブランデーの代用品とされていた
ゴールドラムと合わせて、熟成ラムの9割が輸出用となっている
スパイスドラム
もともとはホワイトラムを飲みやすくしたり、薬効成分を持たせるために生産地で取れたフルーツやハーブ、香辛料等を砂糖と一緒に漬け込んだもの
英語ではラムパンチ、スペイン語ではピョンチ、フランス語ではラム・アランジェ
3.宗主国の違いによる分類
イギリス系 表記:RUM
スコッチの酒造法方を取り入れた製法
特にジャマイカとガイアナではブレンデッドウイスキーのブレンド技術を使っている
骨太で濃い味わいが特徴
地域:ジャマイカ、ガイアナ、バルバドス、トリニダード・トバゴ等
フランス系 表記:RHUM
コニャックの酒造法方と取り入れた製法
アグリコールラムが多く、サトウキビ本来の風味を生かしながら、香り豊かで繊細な味わいが特徴。極端に甘いものは少ない
V.S.O.PやX.Oというような等級を使用しており、ブレンドした最も若いラムの熟成年数を表記する決まりとなっている
地域:マルティニーク島、グアドループ島、ハイチ、モーリシャス島、レ・ユニオン島等
スペイン系 表記:RON
シェリーやシェリーブランデーの酒造方法を取り入れた製法
島もの、大陸ものという2つの系統に分けられる
島ものは、プエルトリコやドミニカ共和国のもので、キューバ同様の味わいである「ロン・リヘロ」といい、当たりの優しい味わいが特徴。キューバ革命の時に亡命した人たちによって作られている
大陸ものは、ボディが厚くしっかりとした甘みの強いものが多いので、シガーと相性が良い。スペインから伝わった製法を踏襲しているため、ソレラシステム等シェリーと同様の手法で作られている